その優しさに甘えて



「あ…。」

ふと気付くと、電車の中。僕は隣に座っている彼の肩にもたれかかっていたようだ。

…って、ええっ?!


ガバッと顔を上げると。

「おう、起きたな。」

特に何も気にしていなさそうなキョン君の顔があった。



「す、すみません!」

「まあ今日は気にすんな。
普段なら男がよっ掛かるな気色悪いと言いたいとこだがな。」



怒ってはいないようだ。
それどころか珍しく僕に笑いかけている。



「まだ着くまで時間あるしもう少し寝とけ。
ハルヒ達も熟睡してるぜ?」


ひょいと彼が顎でさす女子達の座る向かいの席を見ると、
涼宮さんも朝比奈さんもぐっすりと眠っている。

長門さんはいつも通り本を開いているが。


…今日は久しぶりに涼宮さんの提案で遠出したから、皆疲れているのだろう。

僕も自分で思っていたより疲れていたようだ。


…ぬかったかな…。



「安心しろ、ハルヒは先に寝てたぞ?」

「そう、ですか。」

まあそれはよかった…かな。
けど。


彼にもたれ掛かって寝てた…というのはなんとも恥ずかしい。


「お恥ずかしい所を…。」

「あー、面白いもん見たな。お前のよだれ垂らした寝顔。」

「ま、マジですか?!」


「よだれは冗談だが寝顔は見た。
口は開いてたぞ。」


「………。」


………失態だ。


落ち込んでいると、彼は笑った。

「まあ気にすんなって。
疲れてんだろ、もうちょい寝てろ。」


「…じゃあお言葉に甘えて。」


おかしげに言う彼に、少し意趣返しする事にした。



今度はわざともたれて。




僕は寝たふりをした。




END



なんか半端;
でも結構好き。


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